桃色ドクター
「私は、仁ノ介さんを愛しています。由美子さんも仁ノ介さんを愛していると思います。好きになる気持ちは誰にも止められないし、自由です。でも……お金を使って、私の気持ちを変えようとするのは卑怯だと思います。私、お金なんかで気持ちは変わりません。でも、お母様のお話は……胸が痛みます。でも、だからと言って、別れることはできません」
気が強い女に見えるかも知れない。
私って。
でも、情にもろくて、結構弱い部分がある。
必死で、自分の強さを引き出そうと手に力を込める。
「ごめんなさい。別れられません」
こんな行動を取ってしまうようなお父さんではないはず。
立派な人。
でも、娘がかわいいし、奥さんも大事。
自分にできることをしようとしただけなのかも知れない。
「お願いです。私達に幸せを返してください」
由美子さんまで頭を下げた。
助けて。
仁ノ介。
私が悪いの?
私が仁ノ介を愛してしまったから、この家族を不幸にしてしまったの?
もうわからない。
私、どうすれば……いい?