桃色ドクター


「私は、仁ノ介さんを愛しています。由美子さんも仁ノ介さんを愛していると思います。好きになる気持ちは誰にも止められないし、自由です。でも……お金を使って、私の気持ちを変えようとするのは卑怯だと思います。私、お金なんかで気持ちは変わりません。でも、お母様のお話は……胸が痛みます。でも、だからと言って、別れることはできません」



気が強い女に見えるかも知れない。

私って。


でも、情にもろくて、結構弱い部分がある。



必死で、自分の強さを引き出そうと手に力を込める。



「ごめんなさい。別れられません」



こんな行動を取ってしまうようなお父さんではないはず。


立派な人。


でも、娘がかわいいし、奥さんも大事。


自分にできることをしようとしただけなのかも知れない。



「お願いです。私達に幸せを返してください」



由美子さんまで頭を下げた。


助けて。

仁ノ介。



私が悪いの?


私が仁ノ介を愛してしまったから、この家族を不幸にしてしまったの?



もうわからない。



私、どうすれば……いい?




< 233 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop