桃色ドクター

「由美子……　おじさん。どうしてここに」



私の声が届いたんだ。


仁ノ介が助けに来てくれた。




「香織まで……どうしたっていうんだ」



エレベーターから降りて、普通に家に帰っていたら、絶対に気付かない場所。



私の想い、届いたんだね。



非常階段の扉を開けた仁ノ介は、由美子さんのお父さんの手に持っている小切手を見て、状況を理解した。




「そういうことですか」




ため息をついた仁ノ介は、家の中で話しましょうと言った。



由美子さんは、この部屋に来たことがあるのかな。


婚約者だったわけだから当然あるに決まっているけど、なんだかそれが悔しい。