桃色ドクター
「仕事が忙しかっただけよ。私はずっとあなたを愛していたし、結婚するものだと信じていた」
私は思い出していた。
まだ知り合って間もない頃の仁ノ介の寂しそうな表情。
ちっともやきもちを焼かないんですよって言った時の顔。
バレンタインのチョコももらえなかったと言った寂しそうな仁ノ介。
「僕は違った。必死で君を愛そうと思った。でも、君を愛す材料がなかったんだ。君は、僕と向き合おうともしなかった。忙しいというのは言い訳にはならない」
愛す材料。
私にはあったのかな。
仁ノ介が愛す材料が。