桃色ドクター
コーヒーの匂いがする。
少し苦いコーヒーが好きな私は、もう大人の女。
あまいカフェモカを飲んでいた頃の私は、遠い遠い過去の私。
白い扉を見つめた。
その先にいるであろうコーヒーを飲む瀬名先生。
コーヒーカップを机に置く音がした。
コトン。
優しい先生のちょっとした休憩時間。
診察室とこの部屋との間にある、先生の部屋。
腰の痛みが、この胸の奥の痛みと反比例して、どんどんなくなっていく。
この腰が治るということは、もう先生とさよならってこと。
きっと、明日にはもっと良くなって、
明後日には、もうここに来る必要がないくらいに治っているだろう。
瀬名仁ノ介。
あなたは、名医です…