桃色ドクター
私の胸のドキドキは、先生に聞こえてしまうくらいに激しくなった。
一瞬のうちに、瀬名先生に甘い言葉を囁かれる奥さんの姿が浮かんだ。
専業主婦で、細くて私より少し若いんだ。
子供が一人いて、瀬名先生が家に帰ると2人が玄関で出迎える。
『ただいま!』
と、彼は、子供にキスをする。
リビングに戻る子供を確認してから、そっと奥さんにもただいまのキス。
「平野さん…ここ、少し痛いでしょう」
目を閉じている私の背中に手を当てる先生。
「へ?あ…全然痛くないです」
きっと、私の態度はおかしい。
明らかに『指輪』を発見してからの私は私でなくなっていた。
「またぁ…嘘ですね?少し硬くなっていますので、気をつけてください。必ず明日も来てくださいね」
私のドキドキが聞こえているはずなのに、瀬名先生はいつも通りの口調で話す。
ただ、昨日よりも声が甘い。
昨日より、とても色っぽい。