粛清者-新撰組暗殺録-
その帰り道。

「!」

斎藤は屯所の前に人影を見つける。

よく見るとそれはあの娘だった。

「なにをしている、こんな時間に」

斎藤はいつものように無愛想に言った。

「はい…ご迷惑ではないかと思ったのですが…」

娘はモジモジしながら言う。

「突然斎藤様のお顔が見たくなりまして…」

「…フン」

斎藤は、何を馬鹿な事を、といった表情でそのまま屯所に入っていこうとしたが、何かを思いついたように立ち止まる。

「…今夜は少し飲み足りんな…お前、俺に付き合わんか?」

「は、はいっ!勿論喜んでっ!」

初めて斎藤からの誘いを受けた娘は、二つ返事で受けた。

…月明かりの中、二人は少し控えめに寄り添いながら、京の街へと繰り出していく。

「そういえばお前の名を聞いていなかったな…何という?」

「はい…私は時尾(ときお)と申します」



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