粛清者-新撰組暗殺録-
「沖田様」

縁側に座っていた総司に向かって、秩が声をかける。

「お薬の時間ですよ」

「…もう薬の時間ですか…苦いから嫌だなあ」

総司は振り向いて、やや力の無い笑みを浮かべる。

…その日総司は、屯所の一室で療養の為に体を休めていた。

寝床の方に戻った総司は、秩に体を支えてもらいながら薬湯を口にする。

「でも今日は随分顔色いいですよ、沖田様」

秩がにこやかに言う。

「秩さんの看病の賜物ですよ…でも」

総司は床に横になった。

「労咳は伝染しますからね…秩さんも僕のそばに入り浸るのは止した方がいい。僕のせいで秩さんに労咳がうつったら何と申し訳すればいいやら…」

「…沖田様っ」

秩は彼の手を握り締める。

「沖田様は私の心配なんかしなくていいんです。今はただ体を治す事だけに専念して下さい。天下の新撰組一番隊組長が病で倒れては武士の名折れ…沖田様が言ってた事でしょ?」

と、その時。

「お嬢さんの言う通りだよ」

部屋に一人の男が入って来た。

新撰組の隊士のようだ。



< 109 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop