粛清者-新撰組暗殺録-
「具合はどうかね、沖田君」

「ああ、武田さん…お陰様で随分調子いいです」

「そうか」

総司のそばに座るや否や、男はいきなり秩を押し退けて総司の手を握り締めた。

「沖田君、死んではいかんよ。君のような男前が死んでしまっては、私は悲しくて悲しくて…」

「やだなあ武田さん、縁起の悪い事言わないで下さいよ」

ケラケラと笑う総司。

その総司を見つめる男の眼差し…どうも只の友人を見つめる眼差しではない…。

「あ…あの、沖田様はこれからお休みになられますのでお引き取りを!」

嫌な予感を感じ取った秩は、少々失礼なくらい強引に男を部屋から追い出した。

「…どうしたんですか、秩さん?」

「……」

秩はほんの少し怖い顔で総司に詰め寄った。

「沖田様、さっきの人は誰です?」

「あ…ええ…うちの五番隊組長、武田観柳斎さんです」

「武田観柳斎…何かあの人…変」

「変?」

「ええ…沖田様を見る目が、他の隊士の人達と違う…何だか…気持ち悪い」



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