粛清者-新撰組暗殺録-
「う…ぐぅうぅぅ…」

芹沢は尚も逃げ延びよう、総司に一矢報いようと刀のところまで這いずるが。

「がはっ!」

とどめは土方の刺突だった。

背中から貫かれ、新撰組局長・芹沢鴨は惨たらしい姿で絶命した。

「総司」

土方は芹沢に刺さった刀を抜き、血糊を拭って納刀すると、総司の方を見た。

「俺はお前の事を誤解していたようだ…あの秩とかいう娘の仇討ちの事で現を抜かして、きっとお前の剣が鈍ってしまうだろうと考えていた。だから斎藤にお前の身辺を探らせていたんだ。お前が駄目になってしまわないうちにと思って…だが違った」

土方はそう言って総司の横を通り過ぎる。

「お前はそんな弱い男ではなかった。むしろ守る者がいてこそ、本当に強さを発揮できる男なんだな…」

…彼の言葉を聞いて、総司は悲しげな笑みを浮かべて刀を納めた。

「副長」

藤堂が土方に駆け寄る。

「平間とその女が逃げた模様ですが…」

「放っておけ。刃向かおうなどとは考えまい」

土方は隊士達に告げた。

「新撰組帰投。屯所に戻るぞ」


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