粛清者-新撰組暗殺録-
「っ!っ!!っ!!!」

断末魔の声を上げる暇すらなく、吉田は総司の刀の切っ先によって三度体を貫かれた。

傷から鮮血を噴き出し、口からも喀血して、彼は何事か呟く。

「鋭く尖った…狼の…牙の如し…」

それが、吉田稔麿のこの世で最期の台詞だった。

彼は己の流した血だまりの中に沈んだのである。

激しく呼吸する総司。

彼は斎藤達の方を見て微笑み…。

「!!」

直後、喀血。

総司もまた、その場に崩れ伏した。

「総司!」

倒れた総司に駆け寄る永倉。

静かに納刀する斎藤。

…三者三様に思惑を秘めたまま、歴史に残る大事件は終結した。

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