粛清者-新撰組暗殺録-
「懲りずにまた三段突きか…壬生狼は噂通り、退く事を知らぬと見える」

「決まり事がありましてね…敵に背を向けると近藤さんや土方さんに叱られるんです」

にこやかに語る総司。

しかし構えこそ同じだが、これは先程の三段突きとは明らかに違っていた。

総司が身に纏う空気、大気を伝わって永倉や斎藤に感じられる彼の剣気、そして総司の刀の切っ先に宿る鈍い光…それら全てが、次に繰り出す三段突きの格の高さを物語っていた。

それ故に吉田の表情も次第に変わっていく。

彼の剣も、先程までとは違うものになるだろう。

如何に総司でも、油断していれば今度こそ両断される。

勝負は一瞬だ。

短い…しかし見ている者達にとっては永遠に感じられる対峙が続いた、次の瞬間!

「おおおおおおっ!」

吉田が先に動いた。

一足飛びに総司の間合いに飛び込み、頭から両断しようと大きく刀を振り上げる!

唐竹割り!

これ程の一撃ならば、確実に頭蓋を斬り割られていただろう。

が、それは叶わなかった。

吉田が刀を振り下ろした時、既にその場に総司はいなかったのである。

その時総司は、まさに神速ともいうべき速さで吉田の背後を捉えていた!

そして三撃が一撃に見えるほどの、これまた神速の三段突きを見舞う!

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