粛清者－新撰組暗殺録－
それから数日が経ったある夜の事。

「はぁっ！はぁっ！はぁっ！はぁっ！」

畦道を懸命に走る酒井の姿があった。

そしてその後ろから、ゆっくりと歩み寄ってくる永倉。

…この夜、酒井は総司の恋人である石井秩のいる寝床に侵入して彼女を犯そうとした。

だが屯所を出た時点で、彼は自分が監視されていた事に気づく。

永倉に発見された彼は、こうしてひたすらに逃げていたのである。

しかし相手は新撰組二番隊組長。

如何に酒井の腕が立つとて、彼から逃げられる筈もない。

「がっ！」

永倉の蹴り飛ばした石に背中を打たれ、酒井は無様に転げた。

そこへゆっくりと近づいていく永倉。

「う…うあああああーっ！」

酒井は素早く立ち上がり、死に物狂いで剣を振るった。

確かに悪くない太刀筋。

いや、むしろ一流といっていい剣捌きだった。

が、それでも超一流には通用しない。

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