粛清者-新撰組暗殺録-
山南の言葉に赤くなる秩。

「山南さんまで!からかわないで下さいっ」

「はははは…すまんすまん」

そう言って山南と明里は腕を組んで屯所の門を潜っていった。

「…いい感じだね、あの二人…」

総司の手を取って、秩は少し羨ましそうに言う。

「…そうですね」

総司はそれに答えるかのように、秩の手を軽く握り返した。

「…これで土方さんとの事がなければ、山南さんも心休まるだろうに…」

…実は山南も上洛後結成されたばかりの新撰組創成期を支えた一人なのだが、元治元年に藤堂平助を仲立ちとして新撰組に加入した伊東甲子太郎という隊士が参加してから、土方との思想的距離が生じつつあった。

以来何かにつけて議論し、相反するようになってしまったのだが、最近壬生村から西本願寺への屯所移転問題で衝突、新撰組結成以来歩調を合わせていた間柄に、完全な亀裂が生じてしまったのである。

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