粛清者-新撰組暗殺録-
人格者である山南自身がこんな事を荒立てるような真似をするとは思えない。
原因は他にある筈だ。
永倉や斎藤は、新参者の伊東が山南を唆して土方と衝突させ、亡き者にしようと画策していると言うが、それも確証はない。
とにかく、土方と山南の間に険悪な雰囲気が漂っている事だけは確かだ。
「これまでの逃亡した隊士達のように、同じ新撰組の者同士で抹殺だの暗殺だの…山南さんにだけは、そんな真似はしたくないんですけどね…」
総司は悲しげな顔をする。
思えば、彼が隊内暗殺に否定的な言葉を口にしたのはこれが初めてだった。
彼にしてみれば、山南は土方や近藤と同じくらい慕っている人間。
そんな人間を斬る事など、誰だってしたくないに決まっている。
「沖田様…」
総司の心中を察したのか、秩は彼の胸に頬を寄せた。
総司は秩を優しく抱き寄せる。
「どうしたんですか秩さん…近頃らしくありませんよ?」
「……」
何も言わないまま、彼女は総司の胸に顔を埋める。
彼の苦悩は彼女にはどうする事もできない。
こうしてやるしかできなかった。
原因は他にある筈だ。
永倉や斎藤は、新参者の伊東が山南を唆して土方と衝突させ、亡き者にしようと画策していると言うが、それも確証はない。
とにかく、土方と山南の間に険悪な雰囲気が漂っている事だけは確かだ。
「これまでの逃亡した隊士達のように、同じ新撰組の者同士で抹殺だの暗殺だの…山南さんにだけは、そんな真似はしたくないんですけどね…」
総司は悲しげな顔をする。
思えば、彼が隊内暗殺に否定的な言葉を口にしたのはこれが初めてだった。
彼にしてみれば、山南は土方や近藤と同じくらい慕っている人間。
そんな人間を斬る事など、誰だってしたくないに決まっている。
「沖田様…」
総司の心中を察したのか、秩は彼の胸に頬を寄せた。
総司は秩を優しく抱き寄せる。
「どうしたんですか秩さん…近頃らしくありませんよ?」
「……」
何も言わないまま、彼女は総司の胸に顔を埋める。
彼の苦悩は彼女にはどうする事もできない。
こうしてやるしかできなかった。