海,テトラポッド,そして花火。
「さて。
私はちょっと買い物にでも行ってくるよ。」


空になったカップと皿を重ねて,母は立ち上がろうとした。

「待ってください。
僕は,お母様にお願いがあります。」


「ん?
何かな?
三上さんに言われちゃったら,何でもお願い聞いちゃうわよ。」

ふふふ,と笑って答える母。


「明日,僕に倫子さんを貸してください。
もちろん,僕が責任持って家までお送りします。」


甘くて低い声。
プラス,爽やかな笑顔。
母が断れる訳ないよ,と思った。


「私が誘われているのなら,すぐOK出すけれど…それは倫子に聞いてちょうだいね。
母としては,どちらでもいいわ。
倫子の好きにしなさい。」


市の五の言わずに行ってこいと言われると思った。


あの人は肩をすくめて,周りから固めようと思ったのに,と笑った。
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