さよならとその向こう側
千佳は真実を知れば献身的に俺を支えようとするだろう。

彩夏だって、こんな父親の為に悲しい思いをするかもしれない。

それに、俺が死んだら、千佳が借金を背負う事になる?



それは出来ないと思った。


だから決めた。


千佳と離婚をしようと。


離婚さえすれば、千佳は債務から逃れられる。

彩夏を抱えて大変かもしれないが、もう俺は助けてあげる事も支えてあげる事も出来ないから。



千佳。

もしお前がこれを読んでいるなら、俺はもうこの世にはいないのだろう。


「他に女が出来た。」

そう言ってお前に離婚を迫った事、許してくれ。

そうでも言わないと、千佳は離婚に応じないだろうと考えた結果だ。


無事に離婚が成立したら、千佳と彩夏に迷惑をかけないように自ら命を断とうと思う。


これも俺のささやかな計画だ。

どうせ入院なんてしても助からないしな。



最後まで不甲斐ない夫でいればいいだけなのに、千佳と彩夏への未練からこんな遺書を書いてしまった。

今更いい奴ぶっても仕方が無いが、それでもこれだけは知って欲しかった。







千佳と

彩夏を


心から愛している。



どうか二人には、俺の分も長く幸せに生きて欲しい。


         河野 宏




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