さよならとその向こう側
「………そうかもしれない。だけど、俺は彩夏より自分の将来を選んだ。君を引き留める権利なんて無いんだ。…将来も彩夏もどっちもなんて、我が儘すぎるだろ?」



ああ……。

本当にこの人は、なんて悲しそうな顔をするのだろう。


私に未練たっぷりの、そんな切ない瞳を見せられたら………。




私はもう一度、そっと実に抱きついた。


そしてゆっくり、触れるだけのキスをした。


その瞬間、二人の時間が止まった様な錯覚に陥った。





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「お願い、我が儘でいいから。私を実の側にいさせて?」


長い沈黙の後、私は尋ねた。


実は……ただ、私を抱き締めて離さなかった…。





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