さよならとその向こう側
そのまま少しの時間が流れて、
「大丈夫?」
私の顔を覗き込むように、ゆっくり腕の力を緩める実。
私は、ただ頷いた。
誰にも話した事が無いから、どんな風に伝えればいいのか分からなかった。
でも、なんだかとても
実には話しておきたいと思った。
「ねぇ実・・・」
「ん?」
「私は、佐和田教授が疑っていたように・・・お母さんをかくまってなんていないの。」
「?!彩夏、それは・・・
話さなくてもいいんだよ。」
優しく言う実に、ただ首を横に振った。
聞いて欲しいかった。
お母さんは、世間的には未だに”指名手配犯”だけど、本当は違うの。
誰にも訴えられないからこそ、実には知っていて欲しかった。
「実がよければ聞いて欲しいの。勝手だけど・・・。」
私の言葉に、実は少し考えてから・・・・・・・・静かに頷いた。