さよならとその向こう側
「…それは、まだ…いや、いいんだ。彩夏が俺を待っていてくれる事が前提だったから。俺とやり直すつもりがないのなら、聞く権利は無いんだ。」


「いいよ、聞いて。…今日志乃から聞いたから。佐和田教授が、私の両親の事を調べていたって。」


「!?志乃ちゃんが?」


「うん。自分が聞いたって事中々言い出せなくて、どうしていいか分からなくて、私に嘘をついたって。今日謝ってた。
謝る事なんてないのにね?偶然とはいえ、聞きたくも無い事を聞いてしまって、志乃だって悩んだだろうし。
だからこそ、業者の人から聞いたとか嘘ついたり、両親の事は伏せて伝えたみたいだし……。」


自分でしゃべっていて、早口になっているのが分かる。

でも、止まらない。

口が止まったら、涙が溢れてきそうだから。


「…実だって、辛かったでしょ?ごめんね、私のせいで――」



次の言葉を吐き出す前に

実の暖かい腕に包まれた。






「――」



どうしよう。

話すのを止めたら、やっぱり涙が溢れてきた。



「彩夏?……ごめん。彩夏が話したくないなら、無理には聞かないよ?

俺は確かに動揺したし、志乃ちゃんも同じだと思う。
でも、彩夏が謝る事なんてないんだ。彩夏は何も悪くない。」


“彩夏は悪くない”


実は私の耳元で何度も何度も繰り返し囁いた。



私が落ち着くまで。

涙が止まるまで。



< 355 / 403 >

この作品をシェア

pagetop