さよならとその向こう側
「一緒に写真を撮ってあげて、それをプレゼントしてあげて下さい。きっと、とても喜ばれると思いますよ?」


父と並んで写真に写るなんて、大人になって今さら…
そんな気がして恥ずかしい。

でもそれ以上に、とっくに成人した娘の写真が未だに小学生のままなんて、そんな写真しか飾れない父が可哀想に思えた。


…一緒に撮ってあげようかな?



彼の提案だからなのか、私は素直にそう思えた。




「神田さん…ありがとうございます。貴方に相談して良かったです。
父と一緒に働いているのが、神田さんで良かったです。」


すると、彼は優しい笑顔を浮かべていた。



「私なんかでお役にたてたなら光栄です。
では…折角綾さんに誘って頂いたのですから、夕食は私にご馳走させて貰えますか?」


「そ、そんな!私が勝手なお願いをしたのに…せめて私にご馳走させて下さい!」


だって、ただ貴方に会いたかっただけなんだから。

そんな身勝手な理由で呼び出しておいて、夕食までご馳走になる訳には…。



慌てる私を見て、神田さんはクスッと笑った。


「…綾さんに誘われて、夕食までご馳走になりました。

なんて佐和田教授に知られたら、私は大学をクビになってしまいますよ?」






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