さよならとその向こう側


その日、いつも通り研究室で仕事をしていると佐和田教授に呼ばれた。



「失礼します。お呼びでしょうか?」

「ああ。」


一言そういうと、教授は研究室の中にある応接室の扉を閉める。

わざわざ閉めるなんて、誰かに聞かれたらまずい話なのか?

今度の論文発表の件だろうか。


この時、私はそんな事を考えていた。

仕事の話で呼ばれたのだと思っていたから。



「今コーヒーを淹れよう。そこに座っていてくれ。」

教授はそう言って立ち上がろうとする。


「佐和田教授、私がやりますよ。」

「いや。いいんだ。私にやらせて欲しい。」


教授が自分でコーヒーを淹れるところなど見た事が無かった。

一体どうしたというのだ。



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