さよならとその向こう側
キリマンジャロのいい匂いが立ち込めてきた。


そして、二人分のコーヒーが置かれた。

「ありがとうございます。」


「いや。・・・・・・実はな・・・・。」

「はい。」




それだけ言うと教授はコーヒーを一口飲んだ。

「君に話というのは・・・・。」

「はい。」


私は少し緊張しながら聞いていた。





「娘の綾に聞いたんだが、父の日の写真・・・君が提案してくれたそうだね?」


「・・・・は?」

「ありがとう。と、まだお礼を言ってなかった。綾が私と一緒に写真に写ってくれてとても嬉しかったんだ。君のお陰だよ。」


「は、はい。・・・・・・・・・・あの、お話とはこの事でしょうか?」



なんだというのだ?

この程度の話なら、わざわざ応接室の扉をしめてコーヒーを飲みながら話さなくてもいいはず。

教授の意図が掴めない。



だが、私の質問に答えにくそうな表情をした教授が目の前にいて、何かを考えていた。





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