さよならとその向こう側
「それでは、おじゃましました。」
玄関で神田さんの声が聞こえた。
慌ててて時計を見ると、10時半を回っていた。
ガチャ。
玄関のドアが閉まる音がした。
・・・・・・・・・帰ったんだ。
結局何も出来ないまま神田さんが帰ってしまった事に落胆する。
・・・パジャマを手に、足取り重くお風呂場まで向かった。
階段を下りていると、廊下にいた父と目が合った。
「綾。疲れてるのか?・・・神田君にお酌くらいして欲しかったんだが。」
「ごめんなさい。」
謝りながら後悔する。
そっか、私が同席しても良かったんだ。もっと勇気を出してリビングに行けば良かった。
「神田君な、最近彼女と別れたそうなんだ。このところ元気が無くてな。」
父は、そんな事を呟きながらリビングへと入ってしまった。
・・・・・・・・・え?
最近彼女と別れたって・・・・・・?