幼なじみ〜first love〜
ゲレンデに隣接された今夜泊まるホテルは、真っ白な雪景色に合わせるかのように、建物も白く建てられていた。




「絢音ちゃーん!遊也くーん、こっちーっ!」




沙羅の美しく透き通った呼び声と共に、隣で手を振る彼は、最後に会った時とは違い、とても穏やかな顔であたしたちを待っていた。




覚悟を決めて来たのに


胸の鼓動が…

速くなる……




怖い……蒼の目を見れない




「ごめんなぁ…待たせてもーて。雪道の運転、慣れへんから…」




「俺は、てっきり絢音が寝坊したんだと思ってた」




蒼が笑いながら言った。




「蒼ってば…2人が来るまで、ずーっとそればっかり。絢音ちゃんが絶対寝坊したんだーって」




蒼と沙羅が笑いながら話してる。あたしの話題で…




「絢音は昔からイベント事は必ず寝坊してたからなぁー…」




蒼があまりに普通に話すから、思わず蒼の目を見てしまった。




――…ドクン…ッ




「それがなぁ〜蒼…俺もビックリや。絢音めずらしく寝坊せぇへんかったんや…。絢音も成長したんやな、やっと…」




そう言って遊也があたしの髪をグシャグシャにした。




「ちょっとぉ…絢音ちゃんと遊也くんラブラブ〜」




沙羅の冷やかしに、あたしは無理に笑顔を作った。




こうして、ホテルのロビーで、あたしたち4人は集まった。




蒼の腕に引っ付いて歩く沙羅。あたしは2人の後ろ姿を見つめた。




悲しいけど

お似合いで




苦しいけど

これが現実なんだって




そう…受け入れるって

決めたから……




忘れられないんじゃない

忘れようとしてない




だから…

お似合いの2人を

瞳に焼きつけて




あたしは……




蒼を…忘れよう……
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