幼なじみ〜first love〜
あたしはひとり、夜のゲレンデを歩いていた。ライトが照らされていてけっこう思った以上に辺りは明るかった。




ただ果てしなく続く、白い世界。


サクッ…サクッ…――




あたしの足跡だけが雪の上に残されていく……




この時のあたしは



冷静さも

何もかも失っていたと思う




ただ蒼のことが頭から

離れなかった




沙羅が言っていたことが

本当なら




どうして……?



なんで蒼が泣くの……?




あたしはね

蒼に笑って欲しいから



手を離したんだよ



蒼は沙羅を好きだって



だから……



何を悲しんでいるの…?



ひとりで空を見上げて


何を想って泣いてるの…?



助けてあげたい

抱き締めてあげたい




でも…それは

あたしの役目じゃないから



今のあたしには


こんなことぐらいしか

思い浮かばないんだ




「――…ハァ…ッ…ハァ……また雪…降ってきちゃった……」




早く行かなきゃ……

大雪になるその前に




あの場所へ



あたしには

蒼の幸せを願うことぐらいしか



出来ないから……――。
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