幼なじみ〜first love〜
「…蒼…なの…?どう…して…?」


砂に埋まった足は

動かなくて



「……蒼……なの…?」



唇も手も震えたの



嘘だ……だって




あたしがここにいるなんて

知らないはずだし




あたしやっぱり

夢を見てるんだ




これは幸せな夢……


幸せな……




「…絢音……」



少しかすれた低い声


愛しい彼の声




「…本当に……蒼…?」




夢じゃ…ないの…?




「…迎えにきた」




「………なん…で…っ」




溢れる想いに

胸が苦しくて。



息をするのも苦しくて。




「……迎えにくんの…遅すぎた…?」




そう言って彼は、満面の笑顔で微笑んだ。




大人になっても
彼の笑顔は

変わっていなかった



優しい笑顔



太陽のように眩しい

あたしの大好きな



彼の笑顔…



「…ううん……ちょうど…だよ……」



あたしは、砂を蹴りながら、彼の元に駆けてゆく…





好きになりすぎて

苦しくて



傷つけて

遠回りもして



でも…





「…蒼……っ!!」




あたしは、蒼の胸に思い切り飛び込んだ。




「…絢音……っ」




あたしの小さな身体を包み込んでしまう蒼の大きな身体。




変わらないぬくもり



「…逢いたかった………」



その言葉に泣きながらあたしは、小さく頷いた。




静かな波の音を

聴きながら



あたしも

あたしもだよ…蒼



あたしたちは

離れていた時間を
埋める様に


強く抱きしめ合った…――。




抑えていた6年分の想いが溢れだす………



砂の上に残る足跡は

一直線に蒼の元へと…



あたしは

蒼だけをずっと…
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