ベイビーベイビーベイビー
その後はここが地元の小島らしく、更に海沿いにある、観光客が気付かないくらい小さな、けれどとても雰囲気のよい珈琲店に麻美を誘った。
そしてそれ以上、愚痴めいたことを言う事もなく、ただお互いの日常の話など、本当に他愛のない話をし、帰ってきたのであった。
とはいえ、思わず「苦手」と漏らした小島の方から、その日の内に「是非とも」と返事が入ったのはいかにも不自然で、もしかしたら向こうにも何か「打算」があるのではないかと、麻美は勘繰った。
ならばこちらも遠慮なくと、小島との連絡先の交換を了承したのであるが、今日の午後、麻美が百合子の家に向かう新幹線の中、やっと、しかし「機会があれば、また東京でお会いしましょう」と社交辞令の見本のようなメールが一度届いただけであった。
麻美は小島という人物に、距離と警戒心を以て様子を見る外なかった。