ベイビーベイビーベイビー
例の小島による書き込みを見つけて以来、藤堂はずっと麻美と話をしたいと思っていた。
しかしそう上手い具合に麻美を呼び出すこなどできる筈もなく、藤堂は結局ここに押しかけて来たわけだ。
藤堂の実家といっても同じ県内であるし、藤堂の給料で買えるくらいなのであるからさほど高価な酒とも思えない。
おそらくここを訪ねるのに、こういった口実しか見つけられなかったのであろう。
しかしそんな下心を持って訪ねたものの、吉田社長がいない女性二人だけの家に上がりこむのも、藤堂には何やら無粋なような気がした。
藤堂の心の中は相変わらずもやもやした気持ちが渦巻いているが、ここは遠慮も肝心とばかり、
「いえ、突然伺った僕が悪いんで!」
と爽やかに述べると、残念な気持ちをぐっと抑え、持ってきた酒だけ置いて今日は帰ることに決めた。
そして自分の内心を見抜かれない内にとばかり、
「じゃあ、また近い内にお邪魔します!」
と言って、少し急ぐように藤堂は今乗ってきた車に戻ることにした。