ベイビーベイビーベイビー
妙子は、いつもの事ながら、気遣いの固まりである藤堂の様子に思わず微笑みを浮かべた。
そして、そそくさと車に乗って帰ろうとする藤堂を追いかけるように、
「藤堂さん、夕飯は?」
と尋ねた。
その問いかけに、
「いえ、まだ。
今日はその辺で適当に済ますつもりです」
運転席のドアに手を掛けたままで、ここに来た理由も忘れて、なんの計算もなく藤堂はそう答えた。
それを聞いた妙子は、更に明るい表情を浮かべ、
「じゃあ食べていらっしゃいよ。今作ってる最中だからちょうどいいわ。
その内お父さんも帰ってくるから。
あなた、もう息子みたいなものなんだから、そんなに遠慮しないで」
と、藤堂を今夜の夕飯に誘った。