ベイビーベイビーベイビー
食卓に一人残された藤堂がおとなしく待っていると、しばらくして丸い形をしたガラス製のティーポットに紅茶の茶葉とお湯を入れた麻美が戻ってきた。
「いい香りよねぇ」
と、ほのかに漏れるオレンジペコーの香りにうっとりとしながら、それらをテーブルに並べる。
そして、
「茶葉をこのお湯の中でたくさん浮き沈みさせると、おいしい味が染み出すんですって」
と聞いたばかりの知識を藤堂に話して聞かせた。
けれど男性であり大雑把な藤堂には、あまり興味のないところであった。
そんなことよりも妙子がキッチンに籠っている間、吉田社長が帰ってくるまでの時間が麻美と話せる絶好のチャンスである。
そう、女性同士が他愛もない話をして時間を過ごすように、紅茶の茶葉を二人で見て楽しんでいる場合ではないのだった。
藤堂は紅茶の茶葉がポットで踊る様子を楽しそうに見つめる麻美に、やっと、
「そういえば、お見合いの相手とはどうなの?うまくいってるの?」
と、思い出したように白々しく切り出した。