ベイビーベイビーベイビー
 

 佐竹は、

「あぁ、昨日帰ったんだよ。
 今夜は大学時代の友達に呼ばれて飲んでたんだけど、仕事がまだ途中やりだから、先に抜けてきたところだったんだよね」

と言って、冴子たちが2件目に選んだ店から程近いビルを指差した。


 冴子は「そうなんですか」と頷きながら、自分にもたれるようにして眠る真理江越しに佐竹を見れば、さっきまで些か険しい顔をしていた佐竹も、冴子同様に落ち着きを取り戻したのか、いつもの明るい笑顔を携えていた。


「アメリカにお友達がいらっしゃって、うらやましいです」

 聞かなくとも、よい休暇だった事は分かる。

「会社で働くのが辛いって奴には申し訳ないくらい、俺は恵まれているよ。
 自腹切ってでも会いたい人がいるなんてさ」

 佐竹はそう言うと、やはり満足そうに笑顔で頷いた。



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