堕天使の涙
取調べ
取り調べ官は案外私に対し同情的に見えた。

良くテレビドラマで見る様な荒々しさは無く、小声でゆっくりと話し続ける私の方に身を乗り出し、何とか聞き取ろうと努力していたのがとても印象的だった…。

「…でも息子さん、悲しんでるよ…。」

恐らく私よりも年の若いであろうその取り調べ官にそう諭される事には少しの苛立ちを感じたが、やはり彼の話す言葉は一つ一つ正しいもので、何も反論する事は出来なかった…。

「いくら犯罪を犯したとは言え、息子さんの為にやったのになあ…。」

私の元には二日に一度程、国選弁護士である初老の男性が訪れるだけで、他の人間は誰一人として現れる事も無かった。警察の人間ですら憐れに思い、私を励まそうとしているのが余計に虚しくさせた。

愚かな夫、愚かな父親だと言われているのだろう。確かに私はどうしようもない程に本当に愚かな人間だ。

銀行強盗を犯した事ももちろん愚かな行為であるし、逃走の最中に人を跳ね飛ばした事
も、そこから逃げ出した事も、後になって再び戻った事も、そこでまた事故を起こした事も…。

思い出せば後悔ばかりだ。ただ、息子の手術代をどうにか工面しようと実行に移した点だけは後悔しないようにと自分の心に言い聞かせた…。それさえも後悔したのでは全て何もかもを否定する事になってしまう…。

勿論そんな金で息子は喜ばなかっただろうが、他には手段が浮かばなかったのだ。愚かであるとは思っても父親として行動しない訳にはいかなかった。万に一つの可能性があった…。

その可能性が目の前に…手が届く所まで来ていたのに…。

幾ら思い返しても最後は後悔の念しか浮かばなかった。

もう一度あの場面に戻れるのなら私は…。

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