[短編集]恋花
どうしてだろう。
ありきたりでありふれた言葉なのに、こんなにも私の胸に響くのは。
「高校に行っても、がんばれ」
教室のあちらこちらからは誰かがすすり泣く声が聞こえた。
「…ありがとうございます」
卒業証書と、そして記念品、それから卒業アルバムを受け取った私は、
それだけを言って、自分の席についた。
言えた。
やっと、言えた。
ずっとずっと言いたかった一言。
本当は、もっともっと言わなくちゃいけない言葉はいっぱいある。