[短編集]恋花
怒りにも似た、何と言っていいのかわからない感情が、俺の中で渦を巻いていた。
できるものなら、マキの命を奪った女の顔を、一度でいいからこの目で見てやりたいと思った。
女の顔を、穴があいてしまうくらい睨んで、そしてマキを返せと
どうにもならない言葉で、女を苦しめてやればいい。
そのくらいやらないと、俺の気持ちは静まらない。
その日の帰り道。
ダイキと本屋へ寄ったあと、ひとりになった俺は、イヤホンを耳にさしながら帰路をたどっていた。