[短編集]恋花
端から見れば、まるで告白をされているようだ。
なんてのんきなことを考えている場合じゃない。
泣きつかれようが腕をちぎられようが、殺されたくなんてない。
マキには失礼だけど、俺はまだ、こんなところで死ぬわけにはいかないんだ。
自分に強く言い聞かせ、グイッと、掴まれている手首を自分のもとに引き戻す。
右足に力を入れる。
早すぎる鼓動に、一瞬足がもつれるが、なんとか体制を持ち直す。
が、一歩踏み出した世界の先に見えたのは、光ひとつない暗闇だった。