Drop Piece



晴翔くんに呼び掛けられた。

「はい?」

晴翔くんは頭をぐしゃぐしゃと掻きながら、ぼそりと呟いた。


「敬語…じゃなくていいから」


そう言い終えると、また顔を服の袖で隠す。


「ありがとう!」


それは少しだけ晴翔くんと近くなれたってことかな?

「あたしも敬語じゃなくて…ってもう敬語じゃなかった」


なんだかおかしくてまた顔が緩む。


「晴翔く…」

「…ると」

「え?」

「晴翔…っ。呼び捨てで…いい」

ちょっとだけ視線をあたしに向ける。


顔が真っ赤だった。


「じゃぁあたしも光でいーよっ」


琉飛と全然違うタイプ。メンバーってこんなに違うんだ。

あたしはドアを開け、出ていく間際にもう一度振り返る。



やっぱりいきなりは呼び捨て……恥ずかしいかも…琉飛は結構無理矢理だったしなぁ。

だけど、恥ずかしさを振り払い、勇気をだす。


「えっと…し…仕事頑張ってねっ晴翔…っ!」


返事をされるのも恥ずかしくて、死にそうだったから急いで部屋を出る。


晴翔のシャイっぷりが移ったみたいにあたしも緊張した。でも、ちょっとずつだけどみんなと仲良くなれてる…かな、と思いたい。



晴翔もあの楽屋事件の時は色々言ってきたけど、良い人だったし!!


そんなに悪い人たちじゃない、って思うとドラマの撮影への重かった気持ちも軽くなった。


「よしっ頑張ろっ!!」


台本をしっかり抱き締め、松井さんの機嫌を直す方法を考えた。



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