Drop Piece
『もう利央に負けないぐらいの愛で応えてあげるっ』
不意打ちだよ、あんなの。
ずるいよ、あんなの。
頭に残る光の笑顔。
俺の負けが確定した瞬間。
『みかん?』
「琉、落とせなかったよ」
余裕だった筈なのに。
簡単だった筈なのに。
『俺は…見抜いて…たよ』
「ん、そーだね」
『俺らの…オヒメサマなんだよ』
「琉、寝呆けてる?」
普段の琉からは発されないようなことば。
オヒメサマ…か。
「じゃー、我らがボスはオヒメサマをどうするだろね?」
知ってるよ、俺。
壱流がこの前のドラマ撮影で今まで女の子に向けたことのないような視線で光を見てたこと。
壱流は気付いてないかもしれないけど。
その視線は、演技がすごかったから、とかじゃないよ。
光に、何か他の子と違うものを、感じたんでしょ?
「うー、悔しいなぁっ」
先に俺が落とす予定だった
『落とせなかったのが?』
だけど。
「んー何が悔しいかわかんない」
先に落ちたのは。
『なに、それ』
俺の方だったよ。