ウルフ
夏の日
砂浜の向こうには限りなく水平線が見える


一定感覚で波が押し寄せる


そんな海辺に一人の旅人と旧型のロボットがたたずんでいた


旅人はぼ~っと波の行き来を見ていた


時折汗が出たのであろうタオルで拭う仕草も見られる


海はエメラルドグリーンに透き通っていて珊瑚礁や魚達が悠々と泳いでいる姿が簡単に見れた


旅人はそんな景色をただ眺めていた


気温は36度程だろうか、旅人の服装は夏だというのにわりと厚手のものを着ている


『ねぇ…泳いだら?』

旧型のロボットがポツリと言った


『僕はいい…、マグこそ入ってきたら?』


旅人が答えた


『海水は錆びるし自殺行為だよ』


マグと呼ばれたロボットが言った


『あっそうか、ごめん』


『絶対本気で謝ってないでしょ?あとさっきから何してるの?』


『海の向こうには何があるんだろうって考えてた…』


旅人は水平線を眺めながら言った


『さぁね~…、それにしても暑くないの?季節は【夏】だよ!そんな厚手の服着てるのレイぐらいだよ』


レイと呼ばれた旅人は立ち上がった


『ちょっと限界、行くよマグ』


そう言うと砂浜を後にした


『海綺麗だったね』


マグと呼ばれたロボットが言った


汗だくのレイと呼ばれた旅人はロボットをチラッと見て言った


『君は暑くないし最高だったろうね?僕も悪くなかったけど』


『またか…』


うなだれたマグと呼ばれたロボットと汗だくのレイと呼ばれた旅人は海から遠ざかっていく


海は変わらず波を奏でていた…
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