コガネ《短》
図書室に入り、カウンターのほうに目を向けると、そこに先生の姿は無く、誰一人として利用者が居ない図書室は、深い静寂に包まれていた。
怪訝に思い、図書室内を歩き回る。
端から順に本棚の間を探した。
そして、探して三つ目の本棚と四つ目の本棚の間で
床に座り込み、本棚にもたれてすやすやと寝息を立てて眠っている先生を見つけた。
二度目の、先生の寝顔との対面。
俺はその目の前にしゃがみこみ、ぼんやりと先生の顔を眺めた。
伏せられた長い睫毛が、柔らかそうな頬に薄い陰を落としている。
形の良いふっくらとした唇から、微かに呼吸の音が聞こえた。
一冊の本を開いたまま膝に乗せ、姿勢を崩す様子もなく規則正しいリズムで微かに肩を上下に動かして、全く起きる気配がない。
…無防備すぎるその姿に、ため息が出た。
触れたい。
そんなふうに思った自分に、馬鹿じゃねえのと悪態をつく。
精一杯の理性だ。
それでもその場から離れることができずに、そのまましばらくの間穏やかな寝顔を見つめていた。