地球最後の24時間
 エレベーターを降りると激しい怒声が聞こえてきた。どうやらさっきの学生を誰かが止めに入ったようだ。

 胸くそ悪い光景を見なくて済みそうだとほっとしたのも束の間、突然爆竹を鳴らしたような乾いた火薬の音が響いた。

(まさか?)

 ありえない想像が自分の意思とは無関係に足を震わす。玄関へ向かい、そっと外の様子を窺う。銃を持った自衛隊員の傍らで、例の学生が仰向けに倒れていた。自衛隊員の一人が見開いた目で学生の頭に銃をつきつけている。そして……、

(また、撃ちやがった!)

 額は形をなくし、飛び散った血が道路にその跡を広げた。

 その光景は『もしかしたらデマかも?』というかすかな希望を打ち砕いた。

 国民を守るべき自衛官が白昼堂々その国民を銃殺するなど、まずもってありえない。あるとすれば常識を超えた事態が起こっていることに他ならない。

(もう冗談じゃすまされないな……)
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