地球最後の24時間
 そう、亜紀と別れて五年が経つ。新しく男が出来ていてもおかしくない。それどころか、再婚して子供だっているかもしれない。

(それならそれでいいんだ)

 彼女が幸せであった事を確認出来れば、それで俺は満足して死ねる。だが今のままでは死ねない――。

『大型隕石が落下する前にも多数の隕石の落下が予想され、治安維持と防災のため、自衛隊が……』

 部屋には誰も聞いていないニュースが流れ、フィルターだけになった煙草と冷めたコーヒーがテーブルの上に置きっぱなしになったままだ。

 懐かしい姿を取り戻した左手の上から皮のグローブを被せ、キーと銀色のフルフェイスのヘルメットを引ったくるように掴むと部屋を飛び出した。
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