地球最後の24時間
 その時、見た記憶のある大きな木がヘリのライトに映し出された。

「あれは!?」

「どしたん?」

「亜紀の家のそばに立っていた木だ」

 道を塞ぐがれきの山を掻き分けながら、一目散にその場所へと向かう。

(亜紀……無事でいてくれ……頼む)

 目的の木のそばに建っている家はない。在るのは家をかつて形作っていただろう屋根や壁材の残骸と塀だけだ。

「亜紀っ!」

 そこに本来あるべき家はない。変わり果てた塀を伝い門扉を確認すると、確かに亜紀の名字『北村』と書かれた表札が掛けられていた。

(そんなバカな……)

 塀の中に存在するものは僅かに土台となっていたコンクリートだけだ。波はどれだけの
高さに達していたのか、これほど高台にある家々をも飲み込んだというのか?

 突然、サーチライトが俺たちを照らす。見上げるとホバリングするヘリからロープにぶら下がるレスキュー隊員の姿があった。
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