空の少女と海の少年


ーー広い玄関と廊下を抜けると
広がるのはリビングダイニング

対面式のシステムキッチン
大きなテレビとソファーもあり
それとは別に個人の部屋も用意されていた

部屋を散策しに行った春とは別に
なんだか疲れてしまった奈々は
ふわふわのソファーに腰掛けた


今日一日で色々な事があった
いや、ありすぎた

窓の外はまだ明るく
時計は12時を示している

半日しか経っていないのに
とてもたくさんの事があった
ありすぎて頭の整理が追いつかない


「それでも、考えないとーー」

「ーーこのままだと、春と別れることになる」


隣の部屋

部屋を散策しに行った陸に
付いていく気にはならなかった

リビングの壁は一面が窓になっていた
眼下に広がるのは森林と街

能力者の為の場所、学園

能力者でない春はどうなるのだろうか
答えはわかりきっていた
だからこそ、認めたくはなかった


「約束したんだ」


窓に触れた右手に力を入れると
触れた箇所が凍りついていく

窓に映る海斗の瞳は深い蒼


「約束は守る為にあるんだろ?」


なら、守ろうぜ?

その後ろに立つ陸の瞳も
燃えるような赤に変化していた

海斗は振り返ると陸の横を通り
自室へと向かった


「当たり前だ」


海斗の言葉に満足そうに笑うと
陸も自分の部屋へと向かった




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