空の少女と海の少年


「──魔神様っ!」


息を乱しながら起きた蓮は
急いで周りを見渡すが
この部屋には隣りのベッドで
眠る海斗と陸しかいない

蓮は呼吸を落ち着けると
ふうと一息ついた


今のは夢か……?
でもなんだ?この胸に残る
モヤモヤしたものは……

もし夢でなければ
魔神様は……


「ふざけんな!」


蓮は右手を突き出して
魔界と空間を繋ぐ扉を作ると
扉を開けて魔神様の城に移動した

今までの自分の部屋は
ここを出る前と何も変わっていない

蓮は王の間に向かって走り
大きな扉を勢い良く開けた


「魔神様!!……よかった…魔神様っ!」


いつものように玉座に座り
書類に目を通す魔神様を見て
蓮は思わず魔神様に抱き付いた

しかし魔神様は
無表情で蓮を睨み付けた


『……邪魔だ離れろ。人間ごときが我に触れるな。』

「え……?」

『離れろと言っている!お前など我の息子でもなんでもないわ!さっさと消え去れ!』


魔神様が蓮に向かって
右手を突き出すと
一瞬で蓮の姿が消えた

魔神様はそのまま
何事もなかったかのように
仕事を再開した

だが泣きそうな顔で
自分を見た蓮が頭から離れない


『すまん……蓮。我は父親失格のようだ……。』


魔神様の呟きは
誰に聞かれることもなく
そのまま消え去った


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