空の少女と海の少年


海斗は剣を消すとすぐに
春に向かって手を伸ばした


「春っ!!」

「…か……いと…っ!!」


必死で手を動かそうとする
春の苦しそうな声と共に聞こえたのは

冷たく残酷な声


『残念でした。時間切れだよ。』


リールは笑みを浮かべると
鎌の柄で魔法陣を叩いた

その瞬間
魔法陣から溢れていた黒い水が沼となり
春の体はゆっくりと水の中に沈んでいく


「っ!いやああああっ!!」

「春ーーっ!!」


2人の指先は空を切り
何度も何度も宙を彷徨う

それを嘲笑うかのように
ゆっくり、ゆっくりと
沼は春を飲み込んでいく


やっと指先が触れ合って
春は海斗に笑顔を見せた

海斗も笑顔になり
春の手を掴もうとした


希望が見えた瞬間
堕天使は笑った



さっきまでのスピードが嘘のように
黒い沼は一気に春を呑み込んだ



目の前にあった笑顔が消えた



空を掴んだ手に、その指先に残るのは
触れ合った時の微かな温もり

確かにそこにいたんだと

確かに触れたんだと

春の存在を物語る



海斗の蒼い瞳から

零れ落ちた一滴の涙が

沼に小さな波紋を作った


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