スタッカート
「あのね……東子にも、その子の歌をきいてほしいの!」

私は少しの間押し黙り、口を開いた。

「……ごめん。ライブとか無理なんだ」

雑誌を閉じて、ヒナの目を見て言う。こちらを見つめる大きな目がうるんでいくのがわかって、私の心が罪悪感に満たされていく。

「まだ、駄目なんだ……私」

その言葉にヒナの顔が一瞬曇ったけれど、次の瞬間、私の左手を両手でぎゅっと握り締めてきた。

目を見開いてヒナを見ると、強い意志を持った瞳と目が合う。

「お願いっ!ほんとにほんとにちょっとだけでもいいから、一緒にライブに行ってほしいの!」

いつもはそんなに無理を通すようなことをしないヒナが、あまりにも一生懸命にライブに行こうと私に言ってくるので、

私はそれに気おされて、ちょっとだけ人混みを我慢すればいいんだと思う事にして



小さく、うなずいた。
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