つま先立ちの恋
「和泉君だって灯歌ちゃんが傷付いてること承知の上で誘ったんだから、お互い様だよ。だって、それが人を好きになるってことなんじゃないの?両思いばかりが恋愛だったら世の中もっとうまいこと回ってるでしょ」

少し低い、だけど可愛い声だった。初めて聞くパペちゃんの声に私も葵ちゃんも言葉がない。

「和泉君は自分が傷付くことくらいわかってるよ。だけどさ、灯歌ちゃんは自分が和泉君を傷付けることがイヤなんでしょ? だから和泉君に面と向かって言えないんでしょ。

だけどね、そんなのキレイごとだよ。人を好きになるってことは、同じように人を好きになる誰かを傷付けることだってあるんだから。

告白する側には告白する側の、された側にはされた側の、相手に応えなくちゃいけない義務があるんじゃないのかな。それがイヤだって言ってるうちは、ただの恋愛ゴッコ遊びだね」

通り抜けていく風がパペちゃんの短い髪を揺らしていた。その隙間からのぞくパペちゃんの目に、私は息を飲んだ。

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