つま先立ちの恋
「シロ先生、いつから来てたの?」

「ん~、ついさっきな。見てたで、孫の全力疾走」

「あはは、最後がこれでイマイチだったけどね」

「えぇやん。何事もカッコばっかりはあかん。むしろ、こっちの方がらしいで」

シロ先生は赤と青と白のジャージ姿だった。私の右側に立って少し屈むと、

「足は平気か?」

「うん。たぶん、滑り込んだ時に腰を変な風にしちゃったんだと思う」

「代わるわ。東雲は先に保健室行って先生に知らせといて」

「あ、はい!」

それからシロ先生は葵ちゃんに向かってそう言うと、私の腕を肩に担いでくれた。走って行く葵ちゃんの後ろ姿を眺めながら、

「…俺らの方が先に着くかもしれんな」

「言わないでください。あれが葵ちゃんの全力疾走ですから」

そんな言葉を交わしたことは、葵ちゃんにはもちろん内緒。

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