つま先立ちの恋
………泣くな、孫灯歌。
ここで泣くのは違う。


頭ではそうわかっているのにどうしても涙は止められなかった。あふれてあふれて止まらない。

いつか話してもらえたらと思っていたけど、こんな風に………


私が言わせてしまった。パペちゃんに言わせてしまった。ただそれが悔しくてたまらない。


そんな私とは対照的に厳しい顔になっているのは葵ちゃんだった。その顔には、パペちゃんの言葉を一言だって聞き漏らすまいという強い意志が感じられた。

パペット人形は私と葵ちゃんを順番に見る。その人形の向こう側で、パペちゃんが少しだけ唇の端を持ち上げるのが見えた。ただし、片方だけ。

『あの人たちのやってることは火種を拾って火をつけることだけ。あとは火をつけられた相手がどうするか、遊びながら見物してるんだ。ヒカルちゃんはあの人たちに文字通り弄ばれちゃったんだね。

だけど、火種って自分の中にあるんだよ。人間誰しもが抱えてるんだ。それにヒカルちゃんは火をつけられちゃったんだ』

黒い微笑みだと思った。流れる涙が頬を突き刺す。痛い。


『一度火をつけられたら自分じゃ消せないんだよ。燃えて爛れて醜くなって、自分じゃどうしようもできない。ボクの言いたいこと、わかる?』


…………ワカル、、、?


『だから、信じるとか守るとか、簡単に言っちゃダメ。それを先に言われることが相手を追い詰めることだってあるんだから』


ヒカルちゃんの顔を思い出そうとして、ヒカルちゃんは私を見ようとしてくれなかった事実を思い出す。


『本当に信じるなら、本当に守る気があるなら、相手が自分をさらけ出す前にそんなこと言っちゃダメ。でないと、迷子になっちゃうよ』


喉がカラカラに渇いて、ゴクリともできない。


『抑圧されたココロはどこへ行けばいいと思う?』


パペちゃんの言葉は、まるで深い闇のように目の前を包んでしまった。

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