つま先立ちの恋
だからなのか、だからなのか。私も無意識に口にしていた。

「…私も、笑ってる和泉が好きだよ」

そうしたら一瞬、和泉の唇が震えた。だけどすぐにその唇は笑って、

「嘘つけ。」

そらした横顔は私の知らない男の人のような気がした。だからなのか私は無意識に呟いてしまった言葉に少しだけ後悔する。胸が痛い。

もしかしたらこれが「切ない」ってヤツなのか?

なんて、私が心の奥を揺らしていると和泉は歩き出し、机の上に置いてあったスポーツバックを肩にかけた。私に背中を向けたままで言う。

「…話ってそれだけ?」

「あ、うん」

「んじゃ、帰るわ」

短く言ってパタパタと足音を鳴らす和泉。その後ろ姿を目で追いかけながら私は一度ためらい、下唇を噛みしめる。だけど、やっぱり…

「和泉っ!」

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